犬用シャンプーを猫に使わない理由と、そもそも猫を洗う必要があるかの目安。猫5匹と柴犬と暮らす店主が、お伝えします。
「犬用のシャンプーは猫に使ってもいいの?」
犬と猫と同じ家で暮らしていると、一度は考える疑問だと思います。犬用と猫用とボトルを2本持つのは場所も取るし、違いがないなら1本で済ませたい。その気持ち、よく分かります。我が家も柴犬と、猫が5匹がいますので。

先に疑問への回答を書くと、犬用と表示されたシャンプーは、猫には使わないことをおすすめします。理由は犬用と記載があって猫用と書いていないのには理由があるから。私たちがつくっている犬用シャンプーのパッケージにも、「犬以外には使用しないでください」と書いています。「念のため」の一文ではなく、成分に理由があります。
犬用シャンプーを猫に使うときに特に気にしたいのは、香料や精油です
犬用として売られているシャンプーには、香りづけのために香料や精油(植物から取った油)が入っていることがあります。私たちの犬用シャンプーにも、オレンジ精油を配合しています。乾かしたあとに「ふっ」と感じる程度の香りで、強く香らせないのはワンコの嗅覚に配慮した設計。

ただ、精油の中には、猫での中毒の報告があるものがあります。柑橘系やティーツリーがその例です。
だから私たちは、犬用シャンプーには「犬以外には使用しないでください」と表示し、猫のいるご家庭には別の商品をご案内しています。

なぜ猫は「犬用」が苦手なのか — 肝臓で処理しにくい成分があります
猫の体には、ワンコや人と少し違うところがあります。
獣医学の研究では、猫はフェノール類と呼ばれる一群の物質(アセトアミノフェンなど)を肝臓で分解する酵素の働きが、生まれつき弱いと報告されています(出典1)。精油に含まれる成分の一部も、同じ仕組みで処理しにくい、と私は理解しています。実際に精油を猫に使用しないという考えは比較的広く認知されています。
精油そのものについては、こんな報告があります。
- 柑橘系精油の主成分(d-リモネン)を含む殺虫用のディップ剤(シャンプーとは濃度も使い方も違います)を猫に使った研究では、推奨濃度では症状が出ず、濃度を5倍・15倍に上げると、よだれ・ふらつき・震え・体温低下が出たそうです(出典2)。
- 高濃度(100%)のティーツリー油を体に塗られた犬猫 443 例の中毒をまとめた報告では、よだれ・元気消失・ふらつき・震えが数時間以内に出て、若い猫・小さい猫ほど重くなりやすかったそうです(出典3)。
猫は毛づくろいが好きな動物です。被毛に残ったものは、そのまま舐めて口に入ります。
シャンプーの香りが「いい匂い」かどうかより先に、その成分を猫が処理できるかどうか。ここが、犬用と猫用を分けて考える理由です。

そもそも猫はシャンプーが必要? — うちの5匹も、ふだん洗っていません
正直にお伝えすると、我が家の猫5匹は、ふだんシャンプーをしていません。
猫は自分で毛づくろいをして、被毛を整える動物です。猫の飼い方のガイド記事にも、「極端なことをいえば、一生に1回もシャンプーをしなくても被毛を健康に保つことができます」と書かれていました(出典4)。
洗うのは「必要なとき」だけ、と決めています。
- 粗相や何かで汚れてしまったとき
- 長毛の子で毛が絡んできたとき。
- 皮脂の分泌が多めで毛がギトギトしているようなとき。
逆に、皮膚に傷や湿疹、いつもと違う様子があるときは、シャンプーの前にかかりつけへ。洗って様子を見るより、先に診てもらうほうが近道です。
「猫を洗わなきゃいけないのでは」と気にしている方へ。
洗っていないことは、手抜きではありません。猫の体に合わせている、ということだと思っています。

とはいえ、洗ってふわふわになるのを見るのは嬉しいものですが。
長毛猫のお尻周りに活躍する泡シャンプー
それでもシャンプーが実際に活躍するシーンはあります。それが、おトイレ時のお尻汚れ。
猫もお腹の調子が悪くて下痢になることがあります。そんな時、長毛の猫だと、お尻から後ろ足にかけて、しっかりとウンチ汚れををつけて廊下を闊歩しているシーンを見ることがあるはず。(長毛の猫を飼っていらっしゃる飼い主様はきっと共感していただけるはず!)

そんな時に、泡でサッと部分洗いができるシャンプーはとてもおすすめ。体調が悪いときに全身を洗うのは避けたいので、お尻だけ手早く泡で洗い流します。
猫も洗えるシャンプーを選ぶ、3つの目安
私たちが犬猫両用のシャンプーをつくるときに決めた基準を、そのまま目安として書きます。これは私たちの基準であって、満たすことが絶対に正義ではありません。猫の体調や皮膚が気になるときは、獣医師に相談してください。
- 「猫にも使える」と表示されている。 月齢の表示も見てください。私たちの犬猫両用シャンプーは「生後3か月を過ぎた犬・猫」が対象です。
- 香料・精油が入っていない。 上で書いた理由そのものです。全成分表示に「香料」や精油の名前(オレンジ精油、ティーツリー葉油など)が無いかを見ます。なお無香料でも、猫の体質や皮膚によっては合わないことがあります。
- アルコール(エタノール)を使っていない。 「アルコールが気になる」「香りをつけたくない」という声を受けて、私たちはエタノールを使わない処方にしました。
実は、私たちの犬猫両用のシャンプー(無香料)は、犬用シャンプー(オレンジの香り)から7つの成分を引いてつくっています。オレンジ精油、エタノール、そして犬用に消臭成分として配合しているチャ葉エキスとカキ果実エキス、ほか3つ。足した成分はありません。
「猫にも使えるようにするには、何を足すかではなく、何を入れないか」。これが、作り手として出した答えでした。

ひとつ補足です。全成分表示には「フェノキシエタノール」という名前があります。名前は似ていますが、お酒などのアルコール(エタノール)とは別の成分で、防腐のために使われるものです。猫用として販売されているシャンプーにも広く使われています。
だから、香りはしません。本当にしないので、「いい匂いにしたい」方には向きません。
消臭成分を配合しているのは犬用のほうです。どちらが上ということではなく、おうちの子と暮らし方で選んでいただければと思います。
最近ではワンコのシャンプーにも無香のものを使いたいというお客様の声が増えてきました。私たちは、ワンコだけではなく、飼い主様の生活の質も良いものであって欲しいと考えています。だから、「犬も無香が正しい」というつもりはありません。各ご家庭の飼い主さんと愛犬の、ベストになるなものを選んで欲しいと思っています。

気をつけたい場面
- 生後3か月未満の子猫・子犬には使わない
- 皮膚に傷、はれもの、湿疹などの異常があるとき、または使って異常が出たときは中止して、獣医師に相談する
- 目や耳、口に入らないように
- 嫌がって暴れる猫を、無理に洗わない(お互いにけがのもとです)
おわりに
犬と猫が同じ家にいると起こる、「どっちのシャンプーを使えばいいんだろう」という小さな迷い。
シャンプーについては、「猫には猫に使えるものを。洗うのは必要なときだけ」。まずはこの2つを目安にしてみてください。
出典
- Court MH, Greenblatt DJ. Molecular genetic basis for deficient acetaminophen glucuronidation by cats: UGT1A6 is a pseudogene, and evidence for reduced diversity of expressed hepatic UGT1A isoforms. Pharmacogenetics. 2000;10(4):355-69. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10862526/
- Hooser SB, Beasley VR, Everitt JI. Effects of an insecticidal dip containing d-limonene in the cat. J Am Vet Med Assoc. 1986;189(8):905-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3771360/
- Khan SA, McLean MK, Slater MR. Concentrated tea tree oil toxicosis in dogs and cats: 443 cases (2002-2012). J Am Vet Med Assoc. 2014;244(1):95-9. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24344857/
- 岩田麻美子「猫がお風呂やシャンプー時に暴れない方法!おすすめのやり方や注意点」All About(2024-07-15 更新)https://allabout.co.jp/gm/gc/31822/